ものづくりって、面白い。
少年の日のワクワクが、今も続いている。

四国事業部高松営業所

川原 達也

四国事業部高松営業所

川原 達也

Section01
職人の手を止めるな

川原達也のポケットには、いつも小さなノートが入っている。風雨にさらされ、油で汚れた表紙はボロボロ。だが彼にとっては、苦労を共にしてきた相棒のような存在だ。
川原の仕事は、施工管理。入社以来、5年間、高松営業所で働いている。手がける船は、4万tクラスのバルクキャリア(貨物船)。その内装工事をマネジメントするのが、彼の仕事である。作業スケジュールの作成、資材の発注、職人の手配。クレーンで資材を船に運び上げる際は、自ら玉掛けも行う。多様な仕事のなかで、特に気をつけていることがある。「いちばんよくないのは、現場にモノ(資材)がないこと。『職人さんの手を止めるな』。それは新人の頃から口すっぱく言われてきましたし、今でも気をつけていますね」。施工をお願いしているのは、協力会社の職人さん。他の現場もかけ持ちしていることが多く、他の仕事しだいで、現場入りが前後することがある。職人さんがいつ入っても対応できるように、早めに動いて、材料を用意しておくこと。そうした注意点を、言われたその場で書き込むために、新人の頃から常にノートを携帯してきた。

Section02
雨の日は、父の工場へ

川原達也の出身は、長崎県諫早市。父は家具作りの職人だった。といっても家庭用ではなく、商業施設の家具がメイン。「浜の町にあるあの店の家具は難しかった」。そんな話を幼い頃から聞いているうちに、川原自身もモノづくりに興味を抱くようになった。「小学5年生の時、夏休みの工作を父と一緒に作ったことはよく覚えています。森で拾った木を使って、イスを作ったんですよ。すごく楽しかった。僕は少年野球もやっていたんですけど、雨で練習が中止になった時はいつも、父が働く工場に行って遊んでいました。いろんな道具があって、自分専用の工場という感じで、憧れてましたね」。
中学卒業後は、地元の工業高校の建築科へ進学。その授業で初めて、施工管理という仕事があることを知った「建物づくりを1から最後までみる仕事。難しい仕事だと思いましたが、いつかやってみたい!と思いました」。
選んだ就職先は、長崎船舶装備。最初は「船の会社?」と思ったそうだが、調べていくうちに、事業の幅広さに魅力を感じるようになった。「だから、船舶事業部に配属された時も、抵抗はありませんでした。逆に、船のことは何にも知らなかったので、知りたいという気持ちの方が強かったですね。高松については、どこにあるの?という感じでしたけど(笑)」。

Section03
ノートが教えてくれること

高松営業所は、造船所から10分の場所にある。そこから先輩と一緒に現場へ通う日々が始まった。先輩の仕事を手伝いながら、見て、聞いて、学んでいく。しかし資材の種類だけでも膨大だ。そこで持ち歩き始めたのが、ノートだった。「いろんな人に、書いた方がいいよと言われたんです。実際、書かないと覚えられない。覚えなきゃいけないことが多すぎて(苦笑)」。最初に覚えたのは、フォークリフトの運転。やがて小さな区画の施工管理を任せてもらうようになり、少しずつ、できる範囲を広げていった。そのポケットにはいつもノートがあった。雨の船上でメモし、油で汚れた手袋で懸命にメモをする日々。雨なのか、汗なのか、字がにじんでいるページも少なくない。でも、どんなにボロボロになっても、捨てることはできないと川原は言う。「ときどき、見返したくなるんですよね。今となっては、わかっていることばかり書かれてあるんですけどね。でも、あの時、こういうことあったがあったなぁと懐かしくなるし、この時の自分、頑張ってるなぁと思えるので。その年の新しい目標を立てる時も、必ず、このノートを見返すんですよ。初心を思い出すために」。

Section04
施工管理が一番緊張する時間

メモが大いに活躍する場面が、もう1つある。施工後の清掃作業の時だ。担当者が1人で現場を歩き、床に残っているごみ、壁や天井にへばりついている木くずやほこりを、徹底的に取り除いていく。と当時にそれは、施工不良を探す大事な時間でもある。「ビスがしっかり留まっていなかったり、パネルに歪みが出てすき間が発生していたり。見つけたら、メモをしておいて、後で処置していくんです」。
清掃後には、造船所職員による完成検査が待っている。川原にとって最も緊張する時間だ。「10人くらいで船内をチェックしていくんです。僕はその後ろを追いかけていくんですが、何度経験してもドキドキします。もちろん、自分たちの施工に自信はあるんですけど、何も問題がなかった時は、めちゃめちゃほっとしますね(笑)。でも、顔には出さないようにします。当然ですよという顔でいるんですけど(笑)、心の中では、よっしゃー!とガッツポーズしてます(笑)」。

Section05
初めて名前を呼んでもらえた

高卒で入社し、造船所で働き始めたのは18の時。最初は、現場で働く周りの大人たちがこわかった。「いろんな年齢層の人たちと一緒に働くことも初めてで、最初は正直こわかったです(苦笑)。1人きりになりたくなくて、いつも先輩にくっついてました」。そんな気持ちが変わったのは、3年目。1人で施工管理を任されるようになり、造船所のいろいろな職員と話をするようになった。「川原」と名前を呼ばれるようになった時は、初めて自分が認めてもらえるような気がして、うれしかった。「今思うと、皆さん、モノづくりに熱い人ばかり。自分にもずっと優しくしてくれてました。缶コーヒーをもらったり、自分が手配ミスをした時も、怒られると思っていたら、じゃあいつ届く?と前向きな言葉をかけてくれたり」。今ではこの造船所で一緒に働く人たちが、大好きになった。

Section06
どこに行っても通用する人間に

しかし、入社5年が経過した今、慣れ親しんだ場所だけで満足していてはダメだとも感じている。「最近は、『他の造船所へ行っても通用するようになれ』と、日々言われています」と話す川原。では、どうすれば、そうなれるのか。その答えもまた、日常にある。「先々のこと、後々のことを、よく考えて仕事をするよう心がけています。例えば、次の人のための準備などですね。細かいやりとりの大切さも最近、わかってきました。後回しにしない、ということも、口すっぱく言われています。いろんな情報が入ってくるので、これが大事だと思ったら、すぐにメモしています」と、なかなかノートは手放せそうにない。
モノづくりの面白さも実感している。「最初はほんとにもう、ただの鉄の板。それが日に日に、船の形になっていくんです。あの情景はいいなぁと思います」。父とも、長崎へ帰省するたびに仕事の話をするようになった。「父は最近、長崎スタジアムシティの内装に携わったみたいなんですよ。その話を聞くと、なぜその資材を使ったの?どういう工法で?と、学生時代とは違う話ができるようになりました。父も、心なしか、前よりも楽しそうに話をしている気がします」。
高松での住まいは、営業所から車で10分のアパート。休日は趣味の古着屋通いか、レゴで楽しんでいるという。「最近は、レゴでF1を作るのにはまっているんですよ(笑)」と、どこまでもモノづくりが好きな川原。次の目標は、「別の造船所で、別の種類の船を担当をしてみたい。自分の能力をもっと上げていきたい」。そう話す表情は、夏休みの工作に夢中で取り組んでいたあの頃のように、いきいきと輝いている。

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