新たなキャリアを、描いていく。
私らしく輝けるこのステージで。

設計部デザイン課

西村 桃子

設計部デザイン課

西村 桃子

Section01
私はこのままでいいのか?

西村桃子は、プロのダンサーをめざしていた。小学3年生から始めたジャズダンス。高校卒業後はアルバイトをしながらダンスのレッスンを続け、何度もオーディションに挑んだ。だがその壁は厚かった。ふと周囲を見わたすと、同級生たちは自分の道を見つけ、着実にキャリアを積んでいる。結婚する友達も出てきた。「自分はこのままでいいのか?」。自問自答を重ねた末に、ダンス以外の道を探し始めた。
最初に就職したのは、不動産会社。初めて事務職として働いた。すると、あることに気がついた。部屋の間取り図を見るのが、無性に面白い。いろいろな間取り図を眺め、「私なら、ここにベッドを置いて…」と、想像するだけでワクワクした。思えば、高校時代に通っていたのは、インテリア科。子どもの頃から、ダンスだけでなく、絵を描くことも大好きだった。
自分の好きなこと、得意なことを、見つめ直した西村は、再び転職活動を始めた。そして27歳で見出した新たな道。それが、船の内装デザインという世界だった。

Section02
図面の上を歩いてみる

船内は、特殊な空間だ。まず、非常に狭い。そのうえ空間自体が丸みを帯びている。床は平らではなく、壁も垂直ではない。そんな空間の内装デザインは、頭の中で歩いてみることから始まると西村は言う。「まずは、造船所から大まかな設計図が送られてきます。それを見て、各部屋の寸法を測りながら、図面の中を歩いてみるんです。そうすると、この扉を開けた時に、この家具と当たるなとか。この家具はじゃまだな、といったことがわかるんです。動線を考えて、必要なものを足したり、引いたりしながら、使いやすい空間にしていきます」。と同時に、心がけているのは、乗客や乗組員にとって居心地の良い空間にすることだと西村は言う。
「一度航海に出たら、一年の半分は海の上という方もたくさんいます。そうした皆さんの心に寄り添い、リラックスできる空間にしてあげたい。例えば、床をフローリング調にしたり。床材も住宅で使うようなクッションフロアにしたり。カラーリングや照明で工夫することもあります。船の中は制限が多いんですが、その中でできることを考える。それが私たちデザイン課の仕事なんです」

Section03
何もわからない私を受け入れてくれた

自分で選んだ道だったが、挫折しそうになったこともある。CADを使って設計をするのは初めて。そのうえ、船の内装設計には、非常に多くのルールが存在する。使う材料の種類も膨大。カラーコーディネイトの知識や、完成後のメンテナンスについても知っておく必要がある。「覚えることがたくさんありすぎて、頭がくらくらしました(苦笑)」。飛び交う専門用語がまるでわからず、会社に行きたくないと思ったこともあった。 それでも続けられたのは、周囲のサポートのおかげ。「わからないことは、聞くしかない」と、勇気を振り絞って質問してみると、周りの先輩たちや上司は丁寧に、すべての質問に答えてくれた。「何にもわからない私を、突き放すんじゃなく、受け入れてくれた。それがうれしかった」。周囲の温かいサポートに応えるためには、自分が頑張るしかない。それが、西村のモチベーションになった。

Section04
子育てと両立できるのか?

ところが入社して数か月後。子どもを授かった。もちろん、うれしかった。でも、ようやく仕事を覚え始めたタイミングだった。「先輩に泣きながら相談しました。どうしよう~って。そうしたら、やさしく『大丈夫よ』と言ってくださったんです」。会社も理解してくれ、出産・育児休業を取得。1年後に職場復帰をはたした。
しかし1年間のブランクは大きい。しかも小さな子どもはいつ体調を崩すかわからない。たぶん周囲に迷惑をかけることになるだろう。このまま、この会社で仕事を続けていいのだろうか?そんな不安を正直に、上司に打ち明けた。すると、「大丈夫。なるようにしかならんけん。家族のほうが大事やけんね」と言ってもらえた。「救われました。実際、今も、子どもが急に熱を出した時も、柔軟に対応してもらえます。子育てとも両立しやすい会社だと実感しています」。

Section05
ダンスで培った表現力が強みに

一方、上司の木下は、入社当初から彼女の可能性を高く評価していた。「西村さんは、コミュニケーション能力が高くて、表現力があるんです。設計の仕事は、プレゼンテーションが大事なんですよ。お客様(船主や造船所)に提案する時、同じ内容でも、伝え方で評価が変わりますから」。西村自身もこう話す。「どうせお仕事するなら、楽しく!というのが私のモットー。プレゼンテーションや打ち合わせの際にも、できるだけお客様の懐に入って、共感することを心がけています。あ、いいですね!という感じで。あとは、身振り手振りが大きいと言われますね(笑)。これもダンスをやっていたおかげかな(笑)」。そう言って明るく笑う西村の笑顔は、人生にむだな経験などないことを教えてくれるようだ。

Section06
あやしく、うれしい、職業病

ダンスの練習に夢中になっていたあの頃のように、西村は今、内装デザインの勉強に熱心に取り組んでいる。仕事場ではもちろん、プライベートの時間でもだ。
「これ、デザイン課の『あるある』なんですけど、外出先でもつい、テーブルやイスを見たり、さわったり、たたいたりしちゃうんですよ(笑)。中が空洞なのか、芯がつまっているのか。木なのか、金属なのか。裏側はどうなっているのか。照明だったら、電源をどうやってつないでいるのか。つい確認しちゃうんですよね。でも、そうやって見ることが大事だと上司からは言われています。普段はカタログでしか見ないので、実物を見られるのは貴重なんです。そうやってさわっていくうちに、この材料はこういう手触りなんだとか、光沢ってこういう見え方をするんだとか、これ使えそうだなとか、自分の引き出しがどんどん増えていくのを感じます。これ、どこどこのメーカーのものだとわかったり。楽しいですね」。外出先でちょっとあやしい動きをしている自分に苦笑いしながらも、一人前のプロへと近づいている自分の変化と成長が、うれしい瞬間でもある。

Section07
制約のなかの自由

そして入社5年目の2024年。西村は初めて、旅客船の内装デザインを1人で任されることになった。船主からの要望は大きく2つ。2か所ある旅客室のうち、1つはレトロな列車のような内装で。もう1つは、外国人向けにわかりやすく和の雰囲気を表現してほしい―と要望された。「船の中なのに列車?」と最初は戸惑った西村だったが、ネットや書籍で資料を探し、デザインに奮闘。頭の中でイメージしていたものが、実際の空間になっているのを見た時は、思わず、「おぉ!できてる!」と感激の声を上げてしまった。
と同時に、船の内装デザインという仕事の魅力も改めて見えてきた。「船の内装って既製品がないんですよ。ありとあらゆるものが、全部オーダーメイドなんです。だから、棚やテーブル、ソファー、照明、壁の絵まで、すべて自分でデザインできるんです」。狭さ、ルールなど、制約は多いが、だからこそ、面白い。そして、新たな夢も芽生えた。「いつか、私が手がけた船に、子どもを乗せてあげたい。その時になんて言ってくれるのか。今から楽しみです」。

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